Yuzu's Discography
『心のままに/くず星』・
寺岡呼人による曲解説!
1 『心のままに』
メンバーは
ドラム 宮田繁男
ベース 松原秀樹
キーボード 長池秀明
この曲は99年の2月にレコーディングされた。
同じ時期の曲としては『悲しみの傘』『始まりの場所』などがある。
一番印象的だったのは、北川君があのサビの歌い方を大まかにしか決めてなく、しかもそんなに練習もせずに本番の歌入れまで溜めて、一気にあの部分を歌ったことだ。だから殆どアドリブ一発といってもいいテイクなのだ。
僕は、その彼のテンションを逃さずレコーディングしたかった。
だから珍しく周りのレコーディングスタッフにはピリピリしながら、なるべくスピーディーに進めるよう心掛けた。
このやり方はその後、『未練歌』でも行われた。
最初のギターのストロークは彼らが考えていた。僕はそのハーモニーを生かしたかったので、8小節は2人だけでその後ドラムを入れる事にした。
レコーディングって不思議なモノで、大体がテイクワンを越えられないものだ。
特にこの『心のままに』は北川君の渾身のテイクで、もう2度と歌えないハズだ。歌った後の彼のぐったりした表情がそれを表していた。ゆずの場合、大体アコースティックギターと歌を入れた後にドラムなどの上モノを入れるのだが、この曲も北川君のヴォーカルを聴きながらバンドが演奏したので、随分あおられながら相当テンションの高い演奏になった。
岩沢君も北川渾身テイクによくついていってハモったと思う。さすが名コンビ!
2 『くず星』
これは路上時代からの名曲。
満を持しての登場、って感じだ。
この曲に関しては“何もしない”ことが最高のアレンジだと思った。
実は一回レコーディングし終えた後に、岩沢君から「もう一回やりたい」と言ってきてやり直したテイクが本チャンになった。岩沢君は割と悠然としてて、普段あんまりやり直しとかはしないしないのだが(リーダーはよくある!)、この曲でやり直しをしたというのは、それだけ思い入れがあるのだろう。
ゆずの独特のハーモニーの絡み。
それはサビの最後の「例え弱くはかない〜」って北川君が歌うパート。絶妙のタイミングだが、例えば僕なんかが考えたら、ああいうタイミングは思いつかないハズだ。歌う人は違うのに深みが増すっていうのは凄いことだ。
3 『ジャニス』
メンバーは
ギター 鈴木茂
ドラム 宮田繁男
ベース 美久月千晴
キーボード 前野知常
ブラスセクション 山本拓夫
ゆずのプロデュースを始めてもう2年ほどたつが、彼らが路上をやめた頃から出す曲に対して「アレンジされた」とか「アレンジされてない」なんていう論争をしばしば耳にしていた。インターネットでも見たし、インタビューもされた。
特に『ゆずえん』のレコーディングが終わった直後のこの時期、ボクは結構そういう意見に対してナーヴァスになっていた。まるでアレンジをしてるボクが諸悪の根元なのか?みたいな錯覚に陥っていて、この『心のままに/くず星』セッションの時は「全部2人でやればいいじゃん」みたいな、少し投げやりな感じでいたと思う。
ところが、レコーディングが始まると彼らは「この曲はドラム入れて下さい」とか「〜みたいな雰囲気で」と普通に言ってきた。
彼らの方がボクより前を行ってるというか、変にこだわってもなく、ただ単に作ってきた曲のイメージを今までと同じように膨らましたいだけだったのだ。そういう彼らの今や自然となっているレコーディングスタイルや環境を何で疑問視してたんだ?って急にボクは我に返った。
さて、そんな中北川君が持ってきた『ジャニス』。
彼からは「ジャジーに」というリクエストがあった(「ジャジー」という言葉を知ってるのにも驚いたが...<笑>)。
でも、ボクは“ジャニス”っていう言葉と曲調からとっさに、同じ70年代に活躍したオーティスレディングと彼がいたレーベル「スタックス」サウンドがハマる思った。リズム&ブルースのはしりと言ってもいいサウンドだ。
とは言っても最初に聴いたこの曲の印象は、日本の70年代のシブイサウンド、しかも横浜横須賀系!(笑)。
ショーグンとか、ダウンタウンブギウギバンドとかクリエイションとか....特に松田優作主演の映画『ヨコハマBJブルース』という作品で優作が歌う曲、それを演奏するクリエイションがやけにこの曲とダブった。だから北川君に「この曲は横浜系だね」「横浜の血が流れている」などとからかったりしてた。それくらいシブイ印象だった。間奏は最初なかったのだが、北川君が「サックス入れたい」と言い、山本拓夫さんに吹いてもらった。
4 『おやすみ』
ここ最近、オレは岩沢君の詞が好きだ。
押してるような、引いてるような、強いような、弱いような、そんな浮遊してる感じの彼の詞はここへ来て円熟味を増してきた感がある。悟ったような(笑)。この曲もそんな印象だった。
ビートルズのホワイトアルバムに『Good Night』ていうリンゴが歌う曲があるが、今回のマキシを一つの“作品”にしてくれる曲だと思ったし、「また一曲目から聴きたい」って思わせるようなアレンジにしたかった。
だから子守歌のようなオルゴールっぽい音とギターだけで始まり、やがて小編成の弦楽器が入ってくる構成にした。