『Gloria』ライナーノーツ


ヒトゲノムってやつが解明されるらしい。
人の遺伝子情報。そこから、頭脳が優秀なもの、容姿が綺麗なものなんかが選択されて、未来へと受け継がれる時代が来るかもしれない。だけど、もしも、お金の価値が無くなったら?地球の環境が変わったら?今の価値観で優秀なものは、まったく通用しなくなるかもしれない。切り捨てられたものの中に、その激動を生き抜く大事なものが、隠されているのかもしれない。

 寺岡呼人が20世紀の最後に贈るニュー・マキシ・シングル「グロリア」、そのタイトル曲は、眠れない夜を歌った激しいバラードだ。
主人公が眠れないのは、過去の痛みや過ちを綺麗な思い出にできないから。何か切り捨てられないものがあるから。闇の中で、彼は問う。「神様教えて 迷わない人などいるのですか?」。曲の冒頭、そしてハイライトのサビで、「僕等はーー!」と叫ぶような歌がどこまでも伸びていく。
ドラマチックなストリングスが、打ちつけるドラムが、PLECTRUMの藤田顕による唸るギター・ソロが、その熱唱を激励する。苦しみを歌ったこの曲には、讃歌=グロリアというタイトルが付いている。きっと大事なものは、弱さや迷いという闇の中に潜んでいるのだ。
苦しみがあるから、"僕等"は、激しく求めあう。その瞬間が、闇を抜けて、夜明けを迎える力となる のだ。

 2曲目に収録された「SO-SO」は、MOJO CLUBの三宅伸治が作詞・作曲したミディアム・ナンバー。
寺岡呼人のCD音源としては初のカバー曲であり、JUN SKY WALKER(S)時代のライヴのソロ・コーナーで、大好きなこの曲を三宅本人とセッションした思い出があるという。たとえ僕をだましても、大事な君なら許せる。そのままの君でいて。この熱烈なラヴソングにも、決して完璧ではない"君"をそのまま愛するという、「グロリア」にも通じる人間讃歌のメッセージが託されている。

さらに、グラム・ロックのタッチとなった「ピテカントロプス ラヴ」。"愛"という不思議な引力で出会った、ふたりの遺伝子。学者や科学者が遺伝子の仕組みを研究しているけど、僕たちは何万年も続いてきたやり方で、"愛"や"生命(いのち)"の不思議を解明しようよ。結論や成果を急ぎすぎてる時代に、彼は"急ぐな"と歌っている。音楽家としても充実期を迎えていることを証明する3曲と共に、切り捨てられないもの、理性や数字だけでは解明できないもの(それは、きっと大事なもの)を携えて、寺岡呼人は21世紀へと歩きはじめた。